会社の同じ部門にみんなに苛められている女性がいた。
自分には最初はそんな気持ちがなかったのだが、周りが苛めていたのでつい同じ事をやっていた。
すれ違いざまに「気持ち悪い」、遠くに見かけると「気持ち悪い」と叫んで小走りで立ち去る。
ところがある日中心人物何人かに彼女からメールが届いた。「気持ち悪い」とはしゃぎながら誰かが大きな声で読んだ。
俺が衝撃を受けたのはそこに書いてあったひとことだった。「わたしはあなたたちと口も利いたこともない」。
『え?こいつらあの女を知っているわけじゃないの?』そしてまだ続いた。
「わたしの夫は美形で、云々、管理職で云々」そのあたりでみな逃げるようにその女性のいるフロアから自分たちのフロアに戻って行った。
自分は彼女の夫が同じ会社のことも、管理職のこともましてや美形なんて知るわけがなかった。
多分、他の人間もそうだと思う。そして衝撃が続く、彼女は病気だったのだ。
その手術のために、その後しばらくして姿が見えなくなった。