この話は、その発端から判っているので、そこら辺から書くが、前半が本当で後半が噂だと予め言っておく。
Aさんの家は、川沿いに広がる雑木林の中に古くからある一軒家で、ブロック塀と林で囲まれている。
その脇には、幅2m程度の細い小道があり、曲りくねって100m程続いた後、大通りに繋がっている。
怪談話など無い場所だったし、禁止されていたが下校の際などは構わずに使っていた。
だが、部活帰りの俺と友人が近道をしようとして夕方、この小道を通った時に甲高い女の声がしたので、ふとAさん宅を覗いてみると、普段は閉め切った雨戸がほんの少し開いており、その隙間から目玉が二つ、こちらをじっと見つめている。
隙間から覗かれるだけでも不気味なのに、恐らく首をかしげた状態なのだろうが、その行動にもびびった。
『こっちへ来い』と言っているようだった。
俺達はその視線と、老女とは思えぬ甲高い声にすっかり怯え、慌てて逃げ帰った。
何人かがそれに遭遇し、その話が学校中に伝わると、その路地を使う者は居なくなった。
怪談話ではなく実在の人間の事だし、関わりたくなかったと言うのが正解かもしれないが、Aさんの噂はそれ以後も続いた。
する為に殺してしまう・・・と言うものだ。
殆ど妖怪扱いされていた訳だが、子供達の間では『Aさんは車が嫌いなので、追いかけられたら車の写真を見せればいい』等と言う
話が広まっていった。
しかし、そんな噂話が広まった事には原因があった。
これを聞いた俺は、本気でAさんを怖がったものだ。