これも余所に登校した奴だけれど…
僕は漫画のアシスタントをしている。
現場の雰囲気にもよるが、ときおり雑談しながら作業をする。
そんなときに聞いた話。
僕は今でもその話は嘘だと思っている。
話してくれた方を仮にAさんということにしておく。
詳しい場所は教えてくれなかったが横浜方面の現場での体験談だそうだ
その現場は深夜に作業をするタイプの現場だそうで、出勤は昼ごろになる。
駅から少し離れたところに坂があり、その上にある住宅地の一角、マンションの一室だそうだ。
Aさんは話の端々で坂の長さと勾配が急であったことを強調していた。
何度もその現場に通っているうちに、いつも坂の袂、道の真ん中にに女の人が立っていることに気づいたそうだ。
美人だった。
Aさんが言った女の人の特徴だ。
原稿の都合によっては早く呼び出されることがあったそうだが、いつ行ってもその女の人はいたという。
お盆の終わりの頃の話。
いつものように現場に向かうとき、一台の車がその坂を下りてきたという。
いつも女の人が立っているのは道の真ん中だ。
「あっ!」と叫んだとき、轢かれたと思った女の人は消えていた。
通行人たちは叫び声の理由が気になるのかAさんの方を見てくる。
ぶつかるような音は聞こえてこなかったし、気のせいだったのかと思った。