拝み屋をやっていた、伊野さんという女性が体験した話だ。
彼女の能力の真偽についてはひとまず置いておくが、地元では相応に名の知れた人物であったらしい。
その伊野さんの元を、ある時ひどくやつれた様子の男性が訪れた。
精神的にかなり参った様子の彼を落ち着かせながら話を聞いていくと、どうも以下のような事情だということが分かった。
──男性(和幸さん、仮名)の一人娘が、一六歳の誕生日を迎えた翌日に自室で命を絶った。
遺書のようなものはなく、周囲の人間に聞いても自殺の兆候すら見られなかったことから、一時は和幸さんたち両親が疑われさえした。
しかしいくら調べても突発的な自殺という以外の結論は見出せず、結局やや遠回りをしたもののそういう形で事は落着したという。
……のだが、それから、どうにも奇妙な出来事が続いているらしい。
亡くなった時の状態のままにされている娘の部屋から、ばたんと何かが倒れるような音がするのだと和幸さんは語った。
更に耳をそばだててみると、ぎしぎしと天井が軋むような音や、「ぐぅ、ぐぅ」という呻き声らしき音まで聞き取れるそうなのだ。
この現象に奥さんはすっかり参ってしまい、今は実家に帰って療養中。
和幸さんは仕事の都合でまだ家に留まっているものの、毎日不特定の時間に起こるこの奇怪な現象にどんどん心身をやつれさせていった。
このままでは自分もおかしくなると思い、藁にも縋る思いで拝み屋の伊野さんを頼ったのだという。
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彼女の能力の真偽についてはひとまず置いておくが、地元では相応に名の知れた人物であったらしい。
その伊野さんの元を、ある時ひどくやつれた様子の男性が訪れた。
精神的にかなり参った様子の彼を落ち着かせながら話を聞いていくと、どうも以下のような事情だということが分かった。
──男性(和幸さん、仮名)の一人娘が、一六歳の誕生日を迎えた翌日に自室で命を絶った。
遺書のようなものはなく、周囲の人間に聞いても自殺の兆候すら見られなかったことから、一時は和幸さんたち両親が疑われさえした。
しかしいくら調べても突発的な自殺という以外の結論は見出せず、結局やや遠回りをしたもののそういう形で事は落着したという。
……のだが、それから、どうにも奇妙な出来事が続いているらしい。
亡くなった時の状態のままにされている娘の部屋から、ばたんと何かが倒れるような音がするのだと和幸さんは語った。
更に耳をそばだててみると、ぎしぎしと天井が軋むような音や、「ぐぅ、ぐぅ」という呻き声らしき音まで聞き取れるそうなのだ。
この現象に奥さんはすっかり参ってしまい、今は実家に帰って療養中。
和幸さんは仕事の都合でまだ家に留まっているものの、毎日不特定の時間に起こるこの奇怪な現象にどんどん心身をやつれさせていった。
このままでは自分もおかしくなると思い、藁にも縋る思いで拝み屋の伊野さんを頼ったのだという。