前に読んだ小説のエピソードのひとつ
夏休みにプールに向かう途中だった小学生は、
通り道にあるスーパーの駐車場で、赤ん坊を見かけた
赤ん坊は一人きりで車の中からこちらを見ており、
目があうと笑って手をふってきた
小学生は微笑みながら手を振り返し、そのままプールへ向かった
数時間後に小学生が帰路についていると、スーパーの周囲が騒がしくなっていた
野次馬たちと警察官と救急車の姿が見える中、悪い予感がして
小学生は群衆をかきわけ騒ぎの真ん中へ向かった
そこで警察官たちは、茹でられたように真っ赤な姿になった赤ん坊を運んでいるところだった
もう生きているはずがないと一目でわかるその赤ん坊の姿に、小学生は錯乱したようになった
初めは小学生や野次馬たちを遠ざけようとしていた警察官たちだったが、
小学生のうわ言のような発言から、小学生が目撃者だと知り事情を聞くため連れていこうとした
呆然としていた小学生が強い視線を感じてふりむくと、
そこには同じように警察官に囲まれた一人の人物がいた
「気づいてたくせになにもしなかったお前が悪い!お前が子供を殺したんだ!」
とその人は叫んで飛びかかってこようとした。だが警察官たちに取り押さえられ、そのまま連行されていった
そうされる途中でも、「あいつが人殺しなんだ!あいつを捕まえろ!」とその人物は叫び続けていた
その人こそが赤ん坊の親だった
スーパーの駐車場に子供を置いたままパチ屋に行き、
興が乗って数時間を費やし帰った時には赤ん坊は死んでいた
大勢の前で罵倒された小学生の事を、慰める人こそいたが責める人はだれもいなかった
だが当の小学生本人は、自分があの時どうにかしていたら赤ん坊は死ななかったのだと自責の念を抱いた
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