796首なし地蔵 2010/02/18(木) 10:51:09 ID:qHWiZd6Y0
「首なし地蔵」
小学生の頃、近所の公園で毎日遊んでくれたお兄さんがいた。
その人は皆から「セミの兄さん」と呼ばれていて、一緒にサッカーをしたり虫取りをしたり、
どんな遊びにも付き合ってくれた。 自分はその頃都会から転校してきて間もなく、そのお兄さんの
ことをほとんど知らなかったのだが、遊べば遊ぶほどに不思議な雰囲気をもつ人だなと思った。
すごく物知りだなーと思う時もあれば、え?こんなことも知らないの?と驚くこともあった。
ある年の夏休みに、セミ採り用に改造した3本重ねの虫取り網を使って、そこら中でジージー鳴いてた
セミというセミをあっという間に全て捕まえて、セミの鳴き声でやかましかった場所を嘘のように
沈黙させてしまったという武勇伝を聞き、それが彼のあだ名の由来だと知った。
小学生にとってはいつでも遊んでくれる楽しい遊び相手だったが、大人達にはいい年して
仕事もせず大丈夫なのかしら、などと白い目で見られていたので少し複雑な気分になることもあった。
ある日、いつもの公園に遊びに行くと、セミの兄さんの周りにたくさんの子供たちが集まっていた。
けいどろや缶蹴り、氷おになどの遊びをするときは10人以上の大人数になることもあるが、
セミの兄さんの周りには明らかに20人近くはおり、その中の半分は近所の友達で、もう半分は見知らぬ顔だった。 どうやら隣町の団地にある山の森に遊びに行くらしく、セミの兄さんが
隣町の小学生も集めて皆で行こうということになったようだった。
その当時は学区外への移動については学校であまり注意を受けておらず、自転車さえあれば
10Km程度の移動はさほど問題ではなかった。 その場にいた大部分のメンバーが行くことになり、セミの兄さんを先頭に隣町の団地に出発した。 この時、セミの兄さんの自転車をこぐスピードがめちゃくちゃ速くて、うちらは息を切らしながら 「やべーよ、何であんなにはえーんだよ」
などと言いながら何とかついていった。うちらが目的地に到着したのはおよそ20分後で、
その後さらに5分ほど待つと全員が到着した。セミの兄さんは皆に向かって大声で言った。
「これから森に入るけど、ここはやばい場所だから絶対に一人で行動しちゃダメだからな!」
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